エアコンの完全分解洗浄とは?通常クリーニングとの5つの違いを徹底解説

完全分解洗浄と通常クリーニングとの違いのアイキャッチ

エアコンの吹き出し口からのぞく黒い点々や、何度掃除しても取れないカビ臭さ。

「完全分解洗浄って必要なの?結局何が違うの?」
「通常のクリーニングじゃダメなの?」

あなたも今、こんな疑問をお持ちかもしれません。

完全分解洗浄と通常クリーニングとの違いを正しく理解していないと、「安いから」と通常クリーニングを選んだ結果、後悔につながりかねません。カビの根本原因を除去できず、臭いがすぐに再発するからです。

そこで今回は、通常クリーニングで「絶対に洗えない場所」の説明、完全分解洗浄の方式の違い、業者の選び方のチェックリストまで、プロの視点からありのままをお話しします。

宇賀神智明 監修者

株式会社ウガホームサービス エタククミ代表

宇賀神智明 (うがじん ともあき)

エアコンクリーニング歴6年以上、延べ5,000台以上の完全分解クリーニング実績。エアコンから漂う嫌な匂い、内部に潜むカビ…。なぜ、掃除をしてもすぐに再発するのか?その根本原因は、フィルターのような「見える場所」ではなく、一般的な清掃では決して届かない「見えない場所」のカビやホコリにあります。この『分解なくして、清潔なし』という現場の常識をお伝えするため、プロとして本記事を執筆・監修しています。

その咳やアレルギー、エアコン内部の「カビ」が原因かもしれません

咳、アレルギー。その原因であるエアコン内部のカビは、放置すると「夏型過敏性肺炎」といった深刻な病気に繋がるリスクがあります。その危険なカビの発生原因が、実はエアコンの「構造」そのものに隠されていることをプロは現場経験から知っています。だからこそ、今からお話しする「クリーニング方法の違い」が、あなたの健康を守る上で非常に重要です。

※カビと健康被害のより詳細な関係性については、ダイキン製エアコンを実例とした解説記事もご用意しています。

目次

通常クリーニングとは?作業内容と洗える範囲

多くの業者が提供している「エアコンクリーニング」は、「通常クリーニング」を指します。まずは、その作業内容と限界を正しく理解しましょう。

通常クリーニングの作業内容(標準的な4ステップ)

一見するとどの業者も同じように見える通常クリーニングですが、その工程には丁寧さが求められます。ここでは、標準的な作業の流れを、プロがどのような点に注意しているかも含めて解説します。

養生と事前準備(約5分)

作業を始める前にお客様の家財を守るための「養生(ようじょう)」を行います。これは、業者の丁寧さを測る最初のバロメーターとも言える重要な工程です。

作業内容: エアコンの真下や周辺の床、壁、近くにある家具(ベッドやテレビなど)を、汚水や洗剤が飛び散らないように専用のビニールシートや養生テープで丁寧に保護します。

宇賀神智明

経験豊富な業者は、エアコン本体をすっぽりと覆う専用の洗浄カバーを用意します。このカバーには排水用のホースが繋がっており、洗浄で出た汚水を直接バケツに流し込むことで、周囲への汚水の飛散を最小限に抑えます。

表面パーツの取り外し(約5〜10分)

次に、洗浄の準備として、エアコンの表面的なパーツを取り外していきます。ここで重要なのは、「何を取り外し、何を取り外さないのか」です。

作業内容: 取り外すのは、基本的にフロントカバー(外装パネル)、エアフィルター(ホコリを捕集するネット状のフィルター)、ルーバー(風向きを調整する上下の羽根)といった、工具を使わずに、あるいは簡単な手順で外せるパーツのみです。

宇賀神智明

これらはあくまで「外装」や「入口」の部品です。言わば、車のボンネットを開けずに、ボディだけを洗車するような状態です。カビや臭いの根本原因となる送風ファンやドレンパン(結露水の受け皿)といった心臓部のパーツは一切取り外しません。

通常クリーニングのパーツ
お客様より簡易的な部分洗浄業者が作業した際の写真をいただきました。このように業者によってはフィルターと外装パーツしか外さないケースもあります。

洗浄(約20〜30分)

ここが通常クリーニング作業のメイン工程です。専用の洗剤を噴霧した後、洗浄機を使ってエアコン内部の汚れを洗い流していきます。

作業内容:
まず、人体や環境に配慮したエアコン専用の洗剤を熱交換器(アルミフィン)にまんべんなく噴霧します。洗剤が汚れに浸透しカビやホコリを浮き上がらせた後、洗浄機で水を噴射して汚れを洗い流します。

プロが暴露】通常クリーニングで使われる「洗浄機」の裏側

多くの通常クリーニング業者は、家庭用の高圧洗浄機(ケルヒャーなど)ではなく、「動力噴霧器」と呼ばれる低圧の洗浄機を使用しています。

これらの水圧は1.0〜3.5MPa程度。これは完全分解洗浄で使用する高水圧洗浄機(9MPa以上)と比較すると、わずか10〜30%程度の威力しかありません。

ケルヒャーと丸山製作所の比較表
動力噴射器
通常クリーニング業者の実際の現場。動力噴霧器をポリバケツの水で使用しており、水道直結ではないため水圧がさらに低下している状態。

なぜプロなのに、あえて威力の低い洗浄機を選ぶのか?

理由は、「洗浄力」よりも「作業時間と故障リスクの低減」を優先しているからです。エアコンを分解せずに高圧洗浄機を使うと、基板(電子部品)に水しぶきが飛んで故障につながります。そのため、故障リスクのない動力噴霧器が選ばれるのです。

しかし、この安全策が洗浄品質の低下を招きます。特に省エネエアコンは熱交換器が分厚く設計されているため、低い水圧では汚れを貫通できず、表面を撫でているだけになり浮き上がった汚れをフィンの奥へ押し込んでしまうのです。

宇賀神智明

動力噴霧器は「故障せずそこそこ洗える」という点で、件数をこなす業者には人気です。しかし、最近の厚みのある熱交換器には逆効果。表面の汚れが奥に押し込まれ、見えない部分でカビがより深刻化するケースも少なくありません。

ダイキンエアコンの熱交換器裏側を分解撮影。フィン(アルミ板)の隙間全体に微細なホコリと黒カビが固着している様子
エアコン熱交換器の裏面。フィルターを通過した微細なホコリが結露水と結びつき、フィンの隙間にカビとして繁殖した状態
宇賀神智明

洗浄が始まると、長年蓄積されたカビやホコリ、タバコのヤニなどが真っ黒な汚水となって、養生カバーのホースを伝いバケツへと流れ落ちてきます。多くのお客様が、この汚水の色を見て「こんなに汚れていたなんて…」と驚かれます。重要なのは、この洗浄はあくまで「手の届く範囲」に限定されているという事実です。通常クリーニングではエアコンの構造上、上の写真のように、熱交換器の裏側など洗浄機のノズルが届かない「死角」が生まれています。そして、洗い流す水量も圧倒的に少ないため、洗剤成分が内部に残り、アルミフィンを腐食させる原因にもなるのです。

部品の洗浄と組み立て(約15分)

最後に、取り外した部品を洗浄し、元通りに組み立てて作業完了です。

作業内容: 取り外したフロントカバーやフィルターなどを、浴室などをお借りして丁寧に洗浄します。洗浄後、水分をしっかりと拭き取り、エアコン本体に元通り組み立てていきます。

宇賀神智明

全ての部品を組み付けた後、必ず試運転を行います。これは、冷暖房が正常に機能するか、異音や水漏れがないか、ルーバーがスムーズに動くかなどを最終確認するための重要なテストです。この試運転でお客様と一緒に動作確認を行い、問題がなければ、養生を全て撤去し、通常クリーニングの場合は、作業完了となります。

通常クリーニングで洗えない場所

ここが最も重要なポイントです。通常クリーニングには、洗えない場所があります。エアコン内部で最もカビが繁殖している「ドレンパンの奥側」「送風ファンの内部」「熱交換器の裏側」は、通常クリーニングでは一切洗浄できません。これらの部位は洗浄度合い0%、つまり完全に手付かずのまま残されます。

部位洗浄度合い(目安)通常クリーニングの範囲とリスク
フィルター、カバー100%取り外して丸洗いするため、問題なくキレイになる。
ドレンパン10-20%手前側の見える範囲しか洗えない。熱交換器から流れてきた汚れが溜まり、逆にカビが繁殖する温床になる可能性がある。
送風ファン40-60%表面的な洗浄は可能だが、羽根の複雑な凹凸の奥にこびり付いたカビの根は除去できない。すぐにカビが再発する原因となる。
ケーシング30-50%見える表面はキレイになるが、壁と接する裏側や内部の凹凸部分は洗浄不可。カビが残存する。
熱交換器20-40%表面のホコリやカビは落ちるが、弱い水圧では汚れをフィンの奥に押し込むだけで、見えない部分でカビが増殖し続ける。

ドレンパン – ホコリと結露水が溜まる場所に通常クリーニングではアクセスできない

ドレンパン全体・グレー樹脂
通常クリーニングでは目に見える範囲のみを清掃するため、ドレンパン本体の汚れは放置されたまま。グレー色の樹脂部品は水垢やカビの蓄積が目立ちにくく、汚れの進行に気づきにくい。
ドレンパン前後比較・3年使用
3年使用で通常クリーニング1回実施のエアコン。短期間でもドレンパン後ろ側に黒カビが発生し、前側のフィン周辺にもホコリと汚れが蓄積。定期清掃だけでは対処できない汚れが進行している。
ドレンパン前後比較・10年使用
10年使用し、過去3回の通常クリーニング歴があるエアコン。ドレンパン後ろ側(緑マーク部分)には黒カビとホコリが厚く堆積し、前側(青マーク部分)にも汚れが広がっている状態。
ドレンパン前後アップ・9年使用
9年使用で通常クリーニング9回実施のエアコン。ドレンパン後ろ側には頑固な黒カビと茶色い水垢が層状に固着し、前側も汚れが目立つ。完全分解洗浄でなければ除去できない深刻な状態。

通常クリーニングで洗える範囲は、見える範囲のみです。つまり「カビの温床」となる箇所は、全く手付かずのまま残されています。

通常クリーニングのメリット・デメリット

メリットデメリット
料金が安い(1台8,000円〜)カビの根本解決にはならない
作業時間が短い(1〜1.5時間)洗浄範囲が見える範囲のみ
対応業者が多い洗剤が内部に残留し腐食のリスクがある
気軽に依頼できる内部の汚れが残るため、すぐにカビが再発
表面的な汚れは綺麗になるアレルギー症状の改善効果は限定的
  • 目に見えるホコリや軽い汚れだけが気になる
  • 予算をできるだけ抑えたい
  • カビ臭やアレルギー症状は特にない

通常クリーニングでは解決できない問題

以下の症状に1つでも当てはまる場合、通常クリーニングでは根本的な解決は期待できません。

これらの場合は、完全分解洗浄が必要です。
  • 吹き出し口の奥に黒い点々(カビ)が見える
  • エアコンをつけるとカビ臭い・酸っぱいニオイがする
  • 黒いススのような粉が飛んでくる
  • エアコンを使い始めてから咳やくしゃみが出るようになった
  • エアコンを買ってから一度も内部の洗浄をしていない

エアコン完全分解洗浄とは?|3つの分解レベルで理解する

完全分解洗浄とは、エアコンを骨組みの状態まで分解し、通常では洗えない「汚れの根源」まで徹底的に洗浄する、最高レベルのクリーニング方法です。

エアコンのほぼ全ての部品を取り外して洗浄する方法なので、送風ファン、前側と奥側のドレンパン、そしてエアコンの外側を覆う本体(ケーシング)も外します。壁に取り付けられた状態で残るのは熱交換器のみです。

しかし、一口に「完全分解洗浄」と言っても、業者によってその分解レベルは全く異なります。まずは、業界に存在する「3つの洗浄レベル」の全体像を把握することで、この後の「通常クリーニングとの違い」の解説がより深く理解できます。

分解レベル作業範囲メリットデメリット
レベル1:部分洗浄誰でも外せる範囲のみ安くて早い内部の汚れはほぼ手付かず
レベル2:分解洗浄送風ファンとドレンパン(手前側)を分解部分洗浄よりは効果が高いカビの温床は洗浄不可
レベル3:完全分解洗浄(背抜き・工場持ち帰り)熱交換器を壁に残すか、丸ごと取り外して洗浄カビを根こそぎ除去料金が高い、対応業者が少ない

レベル1:部分洗浄・通常クリーニング

多くの業者が「エアコンクリーニング」として提供している、最も一般的なサービスです。壁にエアコンを取り付けたまま、見える範囲の部品(フィルター、カバー、吹き出し口など)を取り外し、動力噴霧器で熱交換器の表面を洗浄します。

通常のエアコンクリーニングの様子。カバーを外し、内部の電子部品が見えている状態。
多くの業者が行う最も一般的な洗浄方法です。フィルターやカバーなど、見える範囲のみを洗浄します。作業時間が短く料金も手頃ですが、カビの温床となる熱交換器の裏側やドレンパンの奥といった内部の汚れは残ったままになりがちです。
  • メリット: 料金が安い(8,000円〜12,000円程度)、作業時間が短い(1〜2時間)。
  • デメリット: 洗浄範囲が限定的。カビの温床となる「熱交換器の裏側」や「ドレンパンの奥」は全く洗浄できず、根本的な解決には至らない。
宇賀神智明

「通常クリーニングでは、カビの根本原因が残ったままなので、すぐに臭いが再発するケースがほとんどです。表面的にキレイに見えても、内部の汚れは手付かずです。」

レベル2:分解洗浄(ドレンパン・ファン脱着まで)

「完全分解洗浄」と称して提供していることが多いのが、このレベルです。通常クリーニングに加え、送風ファンやドレンパンを取り外して洗浄します。これにより、通常クリーニングでは届かなかった部分の汚れも落とすことができます。

エアコンの送風ファンを取り外した状態。ファンのあった場所の奥に汚れが見える。
送風ファンやドレンパンを取り外して洗浄するため、通常クリーニングよりはカビの除去率が高まります。「完全分解」と称されることも多いですが、カビの最大の発生源である熱交換器の裏側は洗浄できません。
  • メリット: 通常クリーニングより洗浄範囲が広く、カビの除去率も高い。
  • デメリット: 「熱交換器の裏側」は洗浄できない。また、業者によっては「完全分解洗浄」と宣伝しながら、実際はこのレベルであるケースが多く、消費者の誤解を招きやすい。
宇賀神智明

「多くの業者が『完全分解』と言っているのは、実はこのレベルです。確かにドレンパンや送風ファンを外すので、通常クリーニングよりは格段に綺麗になります。しかし、カビの最大の発生源である『熱交換器の裏側』は手付かずのまま。これでは『根本治療』とは言えません。」

レベル2の分解洗浄だと、ダイキン、富士通、東芝製のエアコンは対応ができないです。これはドレンパンとドレンパンとケーシングが一体型になっているため、ドレンパン→ファン→ケーシングという順番で分解ができないためです。レベル3の完全分解洗浄だと、ドレンパン一体型のケーシングと送風ファンを一斉に外すことができます。

レベル3:完全分解洗浄(背抜き・持ち帰り)

真の意味での「完全分解洗浄」です。壁からエアコン本体を取り外すか、壁に掛けたまま熱交換器を持ち上げる「背抜き」という特殊技術を用いて、熱交換器の裏側まで徹底的に洗浄します。これにより、カビの発生源をほぼ除去することが可能です。

「背抜き」と呼ばれる方法で完全分解洗浄されているエアコン。熱交換器が壁から持ち上げられ、裏側が見えている
壁に掛けたまま熱交換器を持ち上げる「背抜き」という特殊技術で、エアコンの裏側まで徹底的に洗浄します。カビの根本原因をほぼ完全に除去できるため、クリーニング効果が圧倒的に長続きします。
  • メリット: カビの根本原因を徹底的に除去できるため、効果の持続性が圧倒的に高い。
  • デメリット: 料金が高い(20,000円〜40,000円程度)、作業時間が長い(2〜5時間)、対応できる業者が限られる。
宇賀神智明

「ここまでやって、初めて『完全分解洗浄』と呼べます。料金も時間もかかりますが、その価値は十分にあります。例えるなら、虫歯の根本治療のようなもの。表面を削るだけでなく、根っこから治療することで、再発のリスクを最小限に抑えることができます。」

なぜ「完全分解」の定義は曖昧なのか?

理由はシンプルで、「完全分解」という言葉に法的な定義や業界統一基準が存在しないからです。そのため、業者が「うちは完全分解です」と言えば、それがまかり通ってしまうのが現状です。

その結果、本来は「部分洗浄や分解洗浄」にあるにもかかわらず、レベル3の「完全分解洗浄」と宣伝して高額な料金を請求する悪質な業者も後を絶ちません。

通常クリーニングとの5つの違い

通常クリーニングが「部屋の見える場所だけ拭き掃除」だとすれば、完全分解洗浄は「家具を全部動かして隅々まで大掃除」するようなものです。

比較項目通常クリーニング完全分解洗浄
洗浄範囲表面的な部分のみ内部の心臓部まで全て(90〜100%)
使用機器動力噴霧器(1.0〜3.5MPa)高水圧洗浄機(9MPa以上)
使用水量約10リットル100リットル以上(最低30リットル)
洗浄方法低圧で表面を洗い流すパーツを取り外し、高圧洗浄+浸け置き+擦り洗い
効果の持続性見える範囲のみ一時的に改善根本から解決、長期間効果が持続
料金相場8,000〜12,000円20,000〜40,000円
対応業者多数少数(高度な技術が必要)
宇賀神智明

完全分解洗浄では、一台のエアコンに対して100リットル以上の水を使用します。これは通常クリーニングの10倍以上の水量です。洗剤で汚れを浮かせた後、大量の水で何度も洗い流すことで、カビや汚れを完全に除去できます。通常クリーニングでは水量が圧倒的に不足しており、汚れが残ってしまうのです。

※家庭環境によりエアコンの汚れ方は異なるため効果の持続性は異なります。詳しくは以下の記事で解説しています。

通常クリーニングで外すパーツと完全分解洗浄で外すパーツの比較

通常クリーニングで外すパーツ
標準的な通常クリーニングで外すパーツは、前面パネル、外装カバー、フィルター、ルーバーのみです。
完全分解洗浄で外すパーツ
完全分解洗浄で外す部品はスタンダードエアコンでも熱交換器以外のすべての部品を外します。

違い1:洗浄範囲の決定的な違い

完全分解洗浄では、通常クリーニングでは届かない「汚れの死角」に到達するために、以下のパーツを物理的に取り外します。

  • ドレンパン(奥側・裏側も含む)
  • 送風ファン
  • エアコン本体を覆うケーシング(外装)
ドレンパンを分解している様子
ドレンパン(結露水の受け皿)を分解している様子
ファンを分解している様子
ファンを分解している様子
ケーシングを分解している様子
ケーシングを分解している様子

違い2:洗浄方法の違い

完全分解洗浄では、取り外したパーツを専用の洗剤を使い、高圧洗浄機やブラシで一つひとつ丁寧に擦り洗いします。これにより、カビを菌糸レベルから根こそぎ除去できます。

送風ファンを高圧洗浄機で洗浄している様子
完全分解洗浄では送風ファンも外すので、このように高圧洗浄機で徹底的に洗浄できます。
ケーシングを高圧洗浄機で洗浄している様子
通常クリーニングでは洗浄できないケーシングも高圧洗浄が可能です。

違い3:効果の持続性の違い

カビの発生源そのものを除去するため、洗浄後の清潔な状態が長く続きます。通常クリーニングではカビの根本解決にはならず効果が長続きしません。完全分解洗浄は平均1〜2年、清潔な状態を維持できます。

エアコンの各パーツを洗剤につけおきしている様子
汚れに応じて、アルカリ洗剤や漂白剤を使い分けて撃退します。つけ置き時間を長くすることで汚れが柔らかくなり落ちやすくなります。

違い4:作業時間と料金の違い

料金の差は、単なる「時間の差」ではなく、「技術力と洗浄品質の差」です。完全分解洗浄には、配線の記憶や繊細な部品の取り扱いなど、高度な技術と経験が求められます。

エアコンのモーターを外している様子
ドレンパンの横にルーバーを動かすモーターがついてるため、外します。ドレンパンを丸洗いするために必須な作業です。

違い5:対応できる業者の数

次の章でご説明するレベル3の完全分解洗浄(背抜き)は、習得に数年かかる高度な技術が必要のため「背抜き洗浄」は全体の2%~3%ぐらいです。

全国の完全分解洗浄の業者は以下の記事から検索できます。

完全分解洗浄が必要な6つのサイン

ご自宅のエアコンに高額な完全分解洗浄が本当に必要か、迷いますよね。そこで、私が多くの現場で見てきた「内部が深刻に汚染されているエアコン」に共通する、6つの危険信号をリストにしました。

サイン1:吹き出し口に『黒い点々』が見える

エアコンの吹き出し口を覗くと、奥の送風ファンに黒い点々が見える状態です。これはカビのコロニー(集落)であり、運転のたびにカビの胞子を部屋中に撒き散らしている状態です。

吹き出し口に黒い点々のカビがついている様子
吹き出し口の羽(ルーバー)に付着した黒い点々。この写真は奥の送風ファンに生えたカビが、稼働時の回転で飛び散り付着したものです。

サイン2:運転開始時に『酸っぱいニオイ』がする

エアコンをつけた瞬間に、雑巾が腐ったようなカビ臭や酸っぱいニオイがしませんか?これは内部で雑菌とカビが大量繁殖しているサインであり、空気を綺麗にするはずのエアコンが悪臭の発生源になっている状態です。

ケーシングでバイオフイルムが発生している様子
エアコンをつけた瞬間の酸っぱいニオイの原因は、カビだけでなく雑菌の可能性も高いです。雑菌が増殖する際に発生する膜(バイオフィルム)が、雑巾の生乾きのような悪臭を放ちます。

サイン3:風と一緒に『黒い粉』が飛んでくる

これは最も深刻なサインの一つです。内部に付着したカビが乾燥して剥がれ落ち、目に見える形で直接部屋に飛散している危険な状態を示しています。

床に黒い粉が落ちている様子
エアコンから黒い粉が降ってきたら、それは内部でカビが深刻なレベルまで繁殖しているサインです。肥大化したカビが乾燥して剥がれ落ち、運転時の風に乗って部屋中に飛散している危険な状態です。

サイン4:過去に市販スプレーで『DIY洗浄』をした経験がある

良かれと思ってしたその洗浄が、カビの栄養源となる湿気と洗剤成分を内部の奥深くに供給し、状況を悪化させている可能性があります。一度リセットする必要があるサインです。

ヘドロ状態になっているドレンパン
市販のスプレーで洗浄したエアコンの内部。熱交換器に噴霧された洗剤成分は、写真のようにドレンパンに溜まったまま残りがちです。これがカビの栄養源となり、かえって状況を悪化させている可能性があります。

お客様の中に洗浄スプレーを使ってしまい悪化した事例をご紹介しています。

サイン5:通常クリーニング後、臭いやカビが『すぐ再発』した

これは、前回のクリーニングでカビの根本原因が全く取り除けていなかった、何よりの証拠です。表面的な掃除では解決できないレベルに達していることを示しています。

ケーシングでカビが発生してる様子
通常のクリーニングでは、ブラシが届かない奥の部分(写真の赤線部分)のカビや雑菌が残ってしまうことがあります。これが根本原因となり、クリーニング後もすぐにカビが再発してしまうのです。
熱交換器の内側で黒カビが発生している様子
一見きれいに見えても、エアコン内部の熱交換器をよく見ると、フィン(金属の板)の間に黒いカビがびっしりと付着しています。ニオイの根本原因は、こうした見えない部分に残っている可能性が高いです。

サイン6:エアコンの周りや内部にホコリが溜まっている

エアコンは室内の空気を大量に吸い込んで運転するため、本体の隙間や内部にはどうしてもホコリが蓄積していきます。一見すると些細な汚れに見えるかもしれませんが、このホコリはカビにとって格好の栄養源となります。また、内部のフィルターや熱交換器がホコリで目詰まりを起こすと、空気の通り道が妨げられ、冷暖房の効率が著しく低下してしまいます。電気代の無駄遣いや故障の原因にも繋がる、見過ごせないサインの一つです。

エアコンの脇からホコリや抜け毛が見える状態
エアコン本体の上部や側面の隙間に、ホコリやペットの毛などが溜まっていませんか?こうした外側の汚れは運転中に内部へ吸い込まれ、フィルターの目詰まりやカビのエサになるため、こまめな清掃が重要です。
フィンの隙間にホコリやカビが詰まっている熱交換器
フィルターを外した時に見える、熱交換器のフィン(金属の薄い板)がホコリやカビで目詰まりしている状態。冷暖房の効率を著しく低下させるだけでなく、ここを通過する空気が汚染され、アレルギーや悪臭の原因にもなります。

なぜ、これらのサインには「完全分解洗浄」が必須なのか?

上記のサインが一つでも当てはまったなら、その根本原因はすべて共通です。

それは、エアコン内部の最深部、通常クリーニングでは物理的に絶対に手が届かない「汚れの場所」であり、「ドレンパン」や「熱交換器の裏側」が、カビとヘドロで汚染されているからです。

サイン根本原因の場所なぜ通常クリーニングではダメなのか?
黒い点々・黒い粉送風ファン、熱交換器の裏側部品を取り外さないため、カビの発生源そのものを洗浄できない。
酸っぱいニオイドレンパンの奥のヘドロ汚れ高圧洗浄機のノズルが構造的に届かず、ニオイの元が残る。
DIY洗浄・すぐ再発内部全体のカビの根(菌糸)表面の汚れしか洗い流せず、カビの根が残るためすぐに再繁殖する。

つまり、これらのサインはすべて「表面的な掃除では手遅れ」な状態です。

カビの温床となっているパーツを物理的に取り外し、丸洗いする「完全分解洗浄」だけが、この根本原因を取り除ける唯一の解決策です。

「完全分解洗浄」は、背抜きと持ち帰りの2種類の洗浄方法がある

前の章で解説した最高レベルの洗浄である「レベル3:完全分解洗浄」。これには、作業場所や工程によって、主に「背抜き洗浄」「持ち帰り洗浄」という2つの代表的な方式が存在します。

背抜き完全分解洗浄は、エアコンを壁に掛けたまま、熱交換器の背面にあるカバー(背板)まで取り外して洗浄する高度な技術。壁掛けでできる洗浄としては最高レベルです。

持ち帰り洗浄(工場分解)は、エアコン本体を一度壁から完全に取り外し、工場へ持ち帰ってから分解・洗浄する方法。洗浄レベルは最も高いですが、料金が高額になり、エアコンが使えない期間が数日間発生します。

どちらもカビを根こそぎ除去するという目的は同じですが、料金や作業時間、メリット・デメリットが異なります。あなたのライフスタイルやご予算に合わせて、最適な方式を選びましょう。

背抜き洗浄と持ち帰り洗浄を比較!あなたに最適な洗浄方式は?

比較項目背抜き洗浄持ち帰り洗浄
洗浄範囲全パーツを新品同様に洗浄全パーツを新品同様に洗浄
料金相場20,000円~32,000円~
作業時間約2~5時間1週間~2週間(預かり)
メリット・1日で作業完了
・洗浄力が非常に高い
故障リスクが低い
・洗浄力が最強
・複雑な機種も確実
デメリット・料金が高い
対応業者が少ない
・料金が最も高い
数日間エアコンが使えない

【最重要】経年劣化による破損は「損害賠償責任保険」の対象外

多くの業者は「損害賠償責任保険」に加入していますが、これは業者の作業ミスによる故障を補償するものです。製造から10年以上経過した機器の「経年劣化」が原因と判断された破損は、保険適用の対象外となるのが一般的です。古い機種の場合は、このリスクを理解した上で依頼しましょう。

完全分解洗浄の料金相場

エアコンの機種背抜き洗浄持ち帰り洗浄
通常タイプ(お掃除機能なし)20,000〜30,000円32,000〜50,000円
お掃除機能付きタイプ28,000〜40,000円40,000〜60,000円
宇賀神智明

相場より極端に安い料金を提示している業者には注意が必要です。「完全分解」と謳いながら、実際にはドレンパンを外すだけなど、作業内容が不十分なケースがあります。

全国の料金相場はこの記事で確認できます。通常エアコンとお掃除機能付きエアコンや地域別に完全分解洗浄や通常クリーニングの料金比較ができます。

業者選びで失敗しないための2つのポイント

いざ完全分解洗浄をしようと決めたときに、依頼する業者さんを間違えないための2つのポイントをお伝えします。

ポイント1:「どこまで分解するか」を5つの質問で確認する

以下の「質問」を業者に投げかけ、明確に「はい」と答えられるかを確認してください。

  1. 「壁に残るのは熱交換器(アルミフィン)だけになりますか?」(背抜きの場合)
  2. 「ドレンパンは、手前側だけでなく奥側(壁側)も取り外しますか?」
  3. 「エアコン本体を覆っているケーシング(ボディ)は取り外しますか?」
  4. 「作業前後の写真で、分解した状態を見せてもらえますか?」
  5. 「万が一の故障の際、保証はありますか?」
宇賀神智明

「完全分解します」という言葉だけを信じてはいけません。エアコンを壁から完全に取り外す「背抜き」作業まで行ってくれる業者が本当の完全分解洗浄業者です。

ポイント2:写真付きの施工事例で「証拠」を公開しているか?

公式サイトに「どの部品を」「どこまで分解して」「どのように洗浄したか」が分かる、写真付きのビフォーアフター事例が豊富に掲載されているかを確認しましょう。

完全分解洗浄を行った背背面のボディ
完全分解洗浄を行った背背面のボディなど洗浄前と洗浄後の写真があるかチェックしてください。
完全分解洗浄を行ったルーバー
小さな部品の証拠写真を掲載している業者は細かな作業を行っている証拠になります。

エアコン完全分解洗浄を検討している方からよくいただく質問

完全分解洗浄は、どのくらいの頻度で行うのがおすすめですか?

一概には言えませんが、2〜3年に一度が一般的な目安です。ただし、これはあくまで目安であり、以下のような環境ではより短い間隔(1〜2年)での洗浄をおすすめします。

•リビングなど使用時間が長い部屋のエアコン

•キッチンが近く、油汚れを吸い込みやすいエアコン

•ペットを飼っている、または喫煙者がいるご家庭

•アレルギー体質の方がいるご家庭

最終的には、本記事で紹介した「5つのサイン」が見られたタイミングで検討するのが最も確実です。またクリーニングの頻度に関しては、エアコンクリーニングは何年おきが正解?プロが教える「我が家のベストな頻度」の見つけ方を参考にしてください。

作業時間はどのくらいかかりますか?

機種や汚れ具合によって大きく異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

•背抜き洗浄: 2〜5時間

•持ち帰り洗浄: 1週間〜2週間(預かり期間)

特にお掃除機能付きのエアコンは、配線や部品が複雑なため、通常タイプより1〜2時間ほど長くかかる傾向があります。

どんなエアコンでも完全分解洗浄は可能ですか?断られるケースはありますか?

ほとんどの家庭用壁掛けエアコンは可能ですが、以下のようなケースでは断られることがあります。

•製造から10年以上経過した古い機種: 経年劣化によりプラスチック部品が硬化しており、分解時に破損するリスクが非常に高いためです。破損した場合、メーカーに交換部品がなく修理できない可能性があります。

•海外製の特殊な機種や国内メーカーでも構造が複雑な一部の高級機種: 分解・組立の難易度が極めて高く、対応できる業者が限られます。

•設置場所の問題: エアコンの上下左右に十分な作業スペース(最低でも各10cm以上)が確保できない場合、安全に分解できないためお断りすることがあります。

新しいエアコンでも完全分解洗浄は必要ですか?メーカー保証は無効になりますか?

新品購入後1〜2年で、サイン2(酸っぱいニオイ)やサイン4(黒い点々)が見られる場合は、設置環境や使用頻度によって内部が汚れている可能性があるため、完全分解洗浄を検討する価値はあります。

メーカー保証については、業者によって対応が異なります。信頼できる業者は、自社の作業に起因する故障に対して独自の保証制度を設けている場合が多いです。ただし、メーカーの保証規定では「社外業者による分解」を保証対象外とするケースが一般的です。依頼前に、「メーカー保証期間内だが、作業後に不具合が出た場合の保証はどうなるか」を業者に直接確認することが最も重要です。多くの優良業者は、自社の作業が原因であれば責任を持って対応します。

自分でDIY洗浄できますか?

絶対におすすめしません。NITE(製品評価技術基盤機構)の調査によると、市販の洗浄スプレーを使用したDIY洗浄が原因で、エアコン内部の電装部品に洗剤が付着し、発火・火災に至った事故が複数報告されています。また、洗剤が内部に残留すると、それがカビの栄養源となり、かえって状況を悪化させる可能性があります。安全のため、必ずプロの業者に依頼してください。

まとめ:完全分解洗浄は正しい知識で選べば、後悔しない

「完全分解洗浄」という言葉に惑わされないでください。このサービスには洗浄レベルが全く違う複数の方式が存在します。

1. 通常クリーニングと完全分解洗浄は別物

  • 通常クリーニング:表面的な洗浄
  • 完全分解洗浄:カビの温床まで徹底洗浄

2. 完全分解洗浄には2種類の洗浄方法がある

  • 背抜き洗浄、持ち帰り洗浄

3. 多くの業者が「完全分解洗浄」と宣伝していても実態は異なる

  • 「完全分解」に明確な定義がない、「背抜き完全分解洗浄」かどうかを必ず確認
  • 業者によって作業内容が全く違う

4. 業者選びは「どこまで分解するか」の確認が重要

  • 5つの質問で業者の技術力を確認できる

まずは、ご自宅のエアコンの状態を確認してみてください。吹き出し口をスマホのライトで照らすだけで、カビの有無が分かります。業者に依頼する際は、記事内の「5つの質問」を活用して、どこまで分解するのかを必ず確認しましょう。

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